院長エッセイ集 気ままに、あるがままに 本文へジャンプ


カフェレストラン サトウ


  かつて糸満を貿易港とし、明国との通商で栄えた南山城(なんざんぐすく)。その城跡へとつづく県道七号線。高嶺十字路を南に下り、農業改善センター手前を左に少し入った所にカフェレストランサトウはある。他魯毎、尚巴志の嘉手志川をめぐる逸話も今は遠い昔話。外国の文化を吸収しながら、独特の文化を築いてきた琉球の原風景の中に、今年の六月にぽつんと建った南プロバンス風の建物は不思議と違和感がない。
 「商業誌等の取材はお断りしているのですが、会報ならいいでしょう。」言葉とはうらはらに、屈託なく微笑んだオーナーシェフの佐藤光幸氏は、長く沖縄ハーバービューホテルで総料理長を務めたその道の達人である。少し恐縮して訳を尋ねた。
 「あまり、人に知られたくないんです。()息子(三男)とふたりでやっているものですから、限られた人数のおもてなししかできません。その人達がのんびりとやって来て、ゆったりと食事を楽しむ、そんなレストランにしたいのです。」
 佐藤氏の気負いのない言葉は、商業主義とは対極にあるもので、職人の心意気が素直に伝わってくる。そうはいっても、いい店はロコミで広がるもので、訪れるたびにたくさんのお客さんで賑わっている。ブティックを経営する奥様と息子のお嫁さんがフロアで接客にあたるアットホームな雰囲気も人気の秘密であろう。
 お勧めは、リーズナブルな価格で本格的なフランス料理が楽しめるランチメニューだが、特別な日、大切な人(人たち)との会食であれば、ディナータイムがよろしいかと。最高の料理と肩肘をはらない雰囲気が、賛沢で満ち足りた時間を約束すること請け合いである。



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